MASSIVE ACTION S

自己満足で自己完結な小説書きます

この先は戦場か


ほんの2年前までは交易の要所で栄えていた町だった。
戦争が全てを、人も町も風景も、本当に全ての在りかたを変えてしまった。
変わらないモノがあるとすればこの酒と質素な食事、ついでにベッドを提供するこの店だけだろう。
戦時下、前線では無いが武器を持ち徒党を組む輩がそこかしこにいる中、この宿屋は今日もいくらかの客に恵まれたようだ。
 「おやおや、親子で旅をしているお客さんなんて珍しいね」
扉を開けて入ってきた2人組に声をかけた白髪の男、この男が宿屋の主人でたった一人の料理人でもある。
 「食事と泊まれる部屋はあるかい、手持ちが少ないから一部屋だけで良いんだ」
使い古した刀を腰に付けた男、まだ30前後であろう。もう一人はその男の前に立ち店内を眺めている、15ほどの少女、もしくは少年なのだろう、長い髪と幼い顔が性別をわかりにくくしている。
 「食事も部屋も準備できていますよ、しかし食事にするにはちょいと早いから部屋で休んでてくれよ」
そう言いつつカウンターの椅子から立ち上がった主人は、思い出したように付け加えた
「1泊と食事で10クラウンだよ」
「ずいぶんと安いじゃないか」
「ほとんどが部屋代さ、飯には期待するなよ」
「カラスの肉じゃなければいいな・・」
少し低い声で子供ーどうやら少年のようだーが主人に話しかけた。
「カラスは死体を食ってるから変な病気を持ってるかもしれないだろ、安心しろ、飯はいまいちでも毒は盛らねえよ、ほら部屋の鍵だ、階段を上がって鍵の番号の部屋を使ってくれ、それと建物を冒険する時は声かけてくれ案内人を紹介するよ」
 勢いよくうなずいた少年は鍵を受け取り2段飛ばしで階段を上がった。
「お代は飯食うときに払ってくれ、あの子が滑ってころげ落ちないようにあんたも上がってくれ・・」
「すまないな・・もう少し落ち着きがあればいいんだが」
そう言って男も2段飛ばしで階段を上がる


「親子ってのは変なところを受け継ぐんだね、猫目の親子・・・面白いねぇ」
主人は目を細め、しばらくして大きく伸びをした。








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